親の不動産を売却する時の失敗事例とその回避策

はじめに

毎年 、高齢者人口が更新され核家族化が進む現在、

・親が施設に入ることになり親の自宅が不要になったので売却したい。
・相続を考えると親が健在のうちに、不動産を売却して現金にしたい。
・親の体力低下により、畑や田んぼの面倒がみれなくなってきたので売却したい。
・不動産を維持するだけで固定資産税等の維持費が負担なので売却したい。

このような お考えを、今すぐでなくても将来的にはと思われている方に必ず知っておいていただきたいことがあります。

それは、不動産は親が元気な時しか売れない!! というです。

不動産の売却には、売る時点(契約・引き渡し時点)で必ず所有者(親)の売るという意思表示・意思判断能力が必要です。

この意思判断の確認が取れないと、
・欲しい人がいるのに売れない
・現金が必要なのに売れない
・不動産の面倒が見れないのに売れない
ということになってしまいます。

いざ売却を考えた時、そんな状況にならないための準備・方法を解説していきたいと思います。

なぜ、売りたい時に売れないのか?

不動産の売却を依頼する時、契約する時には必ず不動産会社が所有者本人に『不動産を売る意思があるかどうか』を直接確認しなくてはならない義務があります。

そして、決済・引き渡し時には司法書士が売主と買主の間に入り、双方に『買う意思』と『売る意思』を原則面談で確認する義務が課せられています。

現在、民法には意思能力についての定めはありません。

ただ、「私的自治の原則」により、法律関係を形づくった時(例えば契約の時)に契約当事者に意思能力がなければ、自由な意思で法律関係を形づくったとはいえないからです。

契約行為をした当事者に意思能力がない場合、契約は無効になります。

また令和2年に改正される民法では、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」条文が明確に入れられるそうです。

その為、いざ不動産を売却するとなった時、その時に所有者本人にしっかりとした意思判断能力がなければ不動産を売却することが出来ません。

ここで、注意しなければならないのが、万が一意思判断能力がないにもかかわらず契約して引渡しをしてしまった場合、その契約が無効になってしまうということです。

無効になるとどうなるか?

契約が無効になったらどうなる?

取り消し無効の違いをご存じでしょうか?

簡単に言うと、
取り消しは、契約は成立しているうえでその契約をなしにする行為
無効は、もともと契約自体に効力が生じていない行為
とされています。

よく似ていますが、全く違います。

専門用語になりますが、『善意の第3者への対抗』という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?

善意の第3者が対抗できる?対抗できない?

(例1)
Aさんが自分の持っている車を、Bさんにうまいことを言われ騙し取られた(詐欺にあった)とします。Bさんがその騙し取った車を事情を何も知らないCさんに売却したとします。

この場合、Aさんは騙されたことを理由にBさんに契約の取り消しを求めることができますが、仮にBさんがだまし取ったと認め契約が取り消されたとしても、CさんはAさんに車を返さなくてもいいのです。

これを、善意の第3者に対し対抗できないといいます。

しかし、本人(親)の意思判断能力がないのに結んだ売買契約はどうなるか??

答えから言うと、善意の第3者に対し対抗できてしまうのです。

例で解説すると、
Aさん所有の土地をAさんの息子さんがAさんの意思判断能力ががないにもかかわらずBさんに売ってしまいました。Bさんはその土地を分譲業者Cに転売し、分譲業者Cはその土地を5区画に区割りしてD・E・F・G・Hさんに分譲して完売しました。

後に、Aさんの別の息子さんからAさんが土地を売却した時意思判断能力がなかったことを理由にAさんとBさんの売買契約無効の申し出があり認められました。

この場合、もともとの契約(AさんとBさんの契約)自体が、なかったものとされるため、B・C・D・E・F・G・HさんはAさんにその土地を返さないといけないとされています。

ものすごく大変なことになってしまいます

ですから、不動産会社も司法書士も所有者本人の意思判断能力があるかないかを確認して契約を進める義務があるのです。

では、そのようなことにならないよう、どのような準備をしておけばいいのか解説します。

親の不動産を売却する準備

親の不動産を売却することを考え始めた時に、一番最初に親子で確認しておいていただきたいことは、先ほどから説明している通り、所有者(共有者を含む)方の意思判断能力がしっかりしているときに売却を考えることです。

不動産の売却は、所有者が元気なうちに‼

なかなか、親子で話し合うときに親が痴ほう症になったらとかという話はしずらいと思いますが、親にも将来売却の意思がある場合には、ちゃんと話し合うことが必要です。

再確認ですが、売ると決めた時の意思判断能力ではなく、契約の時・引渡しの時の意思判断能力ですので遺言とは違いますので注意してください。

では、いま現在、親の意思判断能力に心配がある場合はどうしたらいいのでしょう?

親の意思判断能力が心配な場合

親の意思判断能力が心配という場合は、医師の診断を受けているか受けていないか、また家族構成等によっても準備が異なってきます。

医師の診断を受けていない場合

親の意思判断能力が心配で、不動産の売却が出来るかどうか不安な場合は、司法書士か不動産会社にまず相談してしてください。

家族構成や法定相続人の人数や構成によって後々トラブルが起こらないだろう取引も考えられるかもしれないので、まずは司法書士又は不動産会社に相談することをお勧めします。

※生命に影響がある、生活に影響があるという場合は不動産の売却よりも医師の診断・治療を優先してください。

現在、医師から意思判断能力のないとの診断書が出ている、または家族からみても明らかに意思判断能力がないと思うときにはどうしたらいいかを解説します。

意思判断能力がないと明らかな場合

家庭裁判所に、後見人の申し立て手続きを行います。

後見人とは、意思判断能力のない本人に代わり契約行為や財産の管理を行う人です。

申し立ては、自分でもできますが出来れば司法書士か弁護士に依頼されることをお勧めします。

なぜかというと、後見人には身内(息子や娘・奥さん)がなりたいと申し出をすることはできますが、裁判所が財産管理をする後見人にはふさわしくないと判断した場合、裁判所が勝手に弁護士(申し立てをした弁護士とは限らない)を後見人に指名してしまうことがあります。

そうなると、本人の預金の引き出しや不動産の売却にはすべて後見人である弁護士を通じて裁判所に許可をもらうことになり何かと融通が利かない部分が出てきてしまいます。

最近は後見人の申し出が多く裁判所の審査(後見人にふさわしいかどうか)が間に合わず、後見人に弁護士を指名してくるケースも多いと聞きますので、出来るだけ身内が後見人になれるよう申して手の手続きを弁護士や司法書士に依頼するのがお勧めです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

特に、ご両親と遠距離で生活されている方や、ご両親が農業などをされていて土地をたくさんお持ちの方、万が一の時には施設などに両親がお世話になろうと考えられている方など各家庭事情はいろいろあると思います。

もし親の不動産を売却しようかと考えている、話し合ってる方はこの記事を参考に早めに不動産会社などにご相談してみてはいかがでしょうか。

いま政府では、高齢化社会を見込んで不動産売却に関する税制面などで、いろいろな優遇策等が出されていますので、いざという時の為にいろいろな情報収集を心掛けてください。